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ヤマトHD 10、20年先を見据え 初の貨物専用機運行開始

ヤマトHD 10、20年先を見据え 初の貨物専用機運行開始

  ヤマトホールディングスは11日、日本航空(JAL)と同グループLCCのスプリング・ジャパンと連携し、成田空港でエアバス A321‐200P2F型の貨物専用機(フレイター)の運航を開始。同日、新千歳空港、北九州空港、那覇空港でも、就航記念セレモニーを実施した。
 

テープカット

   EC市場の成長から宅配便取扱個数が年々増加するとともに、貨物は小口・軽量化が進む中、ヤマトは次の10年・20年先を見据えた新たな輸送手段の1つとして、フレイターを3機導入。旅客機を輸送用途に改造し、積載量は最大28トンを確保、航続距離は約3000Km。当面は成田~新千歳、成田~北九州、成田~那覇、那覇~北九州間での1日9便運航でが、夏には羽田空港も路線に追加され、羽田~新千歳、羽田~北九州間の1日13便の運航を開始する計画。導入済みとなる1・2号機のほか、3号機は19日、成田空港に到着する予定。

■モーダルシフトの受け皿として選択

  ヤマトが長距離輸送の新たなモードとして、フレイターを選んだ背景にはトラック中心の長距離輸送を分散させる狙いがある。時間外労働規制、自動車免許取得者減少、トラックドライバーの高齢化、賃金上昇などの課題に対応するため、モーダルシフトの受け皿の1手段として、航空モーダルシフトを選択。持続可能で強靭な物流ネットワークを構築した。

  ヤマト運輸・下簗亮一貨物航空輸送オペレーション設計部課長によると、近年航空輸送環境に変化がみられるという。成田空港をはじめとする各空港では滑走路増設・延伸による発着枠が拡大。今後は旅客便数の増加が予測される一方、小型化が進んだ旅客機にはコンテナを搭載しにくい機体が増加した結果、高まってきたのがフレイターの需要だ。

 フレイターには、需要に合わせた区間・ダイヤ作成、地震・水害などの災害時に強いメリットがある。同日開かれた就航記念セレモニーで、長尾裕社長は「地方再生、地域活性化の寄与」を強調。「単にモノを運ぶ物流だけではなく、商流をづくり込み、地方のさまざまな特産物など、地域産業の発展に貢献していきたい」と語る。

 

 ■半導体など積極的に新規獲得
 「物流2024年問題スタートのタイミングでの就航となった。これまで長距離輸送を担ってきたトラック、鉄道、フェリー、旅客機床下貨物スペースに加えて、われわれが専用貨物飛行機を運行し、その枠を使える初のチャレンジとなる。特に半導体ビジネスが拡大している九州、北海道エリアでの輸送ニーズを見込む」と、長尾社長は新規荷主獲得にも積極的な姿勢をみせる。

  フレイターによる現在の主な貨物はEC、製造パーツ類、宅急便などが中心となるが、今後は生鮮品など、販路拡大を図る。

 JALの赤坂祐二会長は「ヤマトが2024年問題をはじめとした社会課題に対し、真正面から取り組もうと努力されている姿勢に非常に感銘を受けた」。スプリング・ジャパンの浅見達朗社長は「LCCの貨物専用機運航は日本初となる。気が引き締まる思い」と語った。

  会場には国土交通省の鶴田浩久物流・自動車局長、東京航空局の十河久恵成田国際空港長、成田国際空港の田村明比古社長も駆けつけ、初便を見送った。

  駐機場ではコンテナをメインデッキローダーに積載。ウォーター・サルートと呼ばれる放水で就航を祝った初便は、成田空港A滑走路から那覇空港へと離陸していった。
 

航空コンテナを積載

2024.4.19

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