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予約システム「MOVOバース」が2024年問題を支援

  1. 株式会社Hacobu
    代表取締役社長CEO
    佐々木太郎氏

Hacobuの提供するクラウド物流管理ソリューション「MOVOバース」の登録ドライバーのID数(電話番号)が40万を超えた。国土交通省発表の国内トラックドライバー数の76万7000人(2015年)の過半数にあたるもので、予約システムでは国内トップシェアを持つ。

物流拠点に到着したトラックドライバーの待機時間解消のみならず、作業状況や車両の到着状況を可視化、物流の2024年問題を支援する。開発の背景、システムの強みを佐々木太郎社長に聞いた。




 




--2015年設立時から物流業を対象としたソリューション提供で立ち上げたのか

 「運ぶ」を最適化することを掲げ、物流のイノベーションを起こすことを目的に設立した。私はアメリカに留学した際に現地コンサルティングファームを経験し、帰国してからコンサルティング企業に籍を置いた。その後ベンチャーを起こし、今回が3回目の起業となる。物流に特化する事業は今回が初めて。

 物流はあらゆる産業の重要なインフラだ。物流が機能しないと全産業で 止まってしまう。当時は物流DXという言葉がなかったが、テクノロジーで物流にイノベーションを起こすことで、持続可能な物流インフラを創ることを目指す。

--コンサル時代に物流をどう見ていたのか


 多くのクライアントは、経営テーマのひとつに物流コストをいかに下げるかを掲げていた。実際、物流現場では限界までムダを削っている状態のため、コスト削減の糸口が見つからなかった。

 そこで、私が着目したのは積載率の改善だった。現場で改善策を伺ったところ、配送依頼のFAX用紙の束を見せられた。FAXによる情報ネットワークができていることに衝撃を受け、同時に興味が湧いてきた。詳しく話を聞こうと運送事業者に電話したところ、ようやく東京の運送会社の女性社長から話を聞くことができた。

 日々の配送マッチング方法をお聞きしたところ、依頼があった時点で「どこの運送会社のどのトラックが、その時間、どの辺を走っているのか全部頭の中に入っている」とのこと。それが実に正確らしい。

 大きなヒントを得られた。運行情報をデータベース化することで、荷物のマッチングをデジタル化できるのではないかという点だ。核となる、トラック位置情報を得るため、物流業界ではデジタコが普及していたが、高価で盛りだくさんの機能が備わっていた。

 もっとシンプルに、安いものを作ろう。儲けは度外視して、全国のトラックの位置情報を取得することで、データベースを構築する構想を描き、デジタコの開発・製造を行った。国交省認定も受けたが、量産リスクなどの壁ができ、事業継承は困難と判断、撤退した。

 次に行ったのがデジタコの位置情報など、ステータスを上げるためのクラウド開発だった。市場に流通するシンプルなGPS端末を活用した新たなソリューションとして、動態管理サービス「MOVO フリート」を開発した。

 車両の位置情報、走行履歴を5秒に1回のリアルタイムで可視化し、配送先への到着時刻を自動で記録するジオフェンス機能、日報の自動作成機能を搭載し、車両管理者やドライバーの負担軽減を実現する。

 当初は最も顧客層が多い運送会社を対象としたが、導入数は伸びなかった。デジタル化の提案で営業をしても、「別に今に困ってない」「デジタル化の必要がない」と断られることが多かった。中小運送会社社長の方々は60歳以上だが、実際に導入していただく会社社長は二代目となる30代40代の方が中心、中小運送会社へのダイレクト営業は非効率だと考えた。

 それが近年、配送ネットワークを見える化したいとするニーズが急速に高まってきた。待機料の請求をする際、車両がいつ、どこで、どれだけ待たされてるのか――。それら実績をデータ化しないと 料金交渉ができないためだ。ブラックボックスだったネットワークのフタを開けてみたところ、車両台数を減らすための施策が見えてきた。

――配送案件管理サービス「MOVOヴィスタ」について
 
 配車業務の非効率を解消するもので、立ち上げ時はMOVOコネクトというサービス名でスタートした。配車業務をデジタル化し、生産性向上を支援する。

 当社は利用運送、マッチングのサービスを手掛けていた。荷物を送りたい人が当社サイトで荷物情報を入れると、協力会社の配車担当の方と情報を共有して配送案件を成約するが、荷主や元請け会社から、「この仕組みを自社協力会社とのコミュニケーションで使えないか」との要望が出てきた。FAXを電子的にやりたいというニーズだ。

 当社のマッチングは、基本的にスポット運送を対象にしたものだった。国内運送でスポットは5%程度のごく一部だったため、MOVOヴィスタでは定期便を対象とした。配車表を組みながら、自社車両で不足する車両分だけを協力運送会社へ依頼する、無駄のないオペレーションが可能となった。自社・取引会社の配車バランスを最適化できる。

――大手荷主を対象としたものなのか

 業界構造的に、下請けの下請けを担う物流事業者の方からの改革は難しく、荷主だけではなくて大手の物流会社も含めた。イオンの方から「納品予約はやっているのか」と聞かれたことがある。あまり重要視してなかった点となるが、物流センターがコンピューターのネットワークのハブだとすると、入出荷が結節点であることに気がついた。この情報を管理できれば、運送に関する全体の流れが可視化できるものと考え、入荷を起点とした仕組みで開発を開始した。

――「MOVOバース」の強み

 市場投入したのが2018年。現場で使いこなせるところまでの“伴走”に注力。専門部署のカスタマーサクセスチームを創設し、お客様がツールを使ったサクセスにコミットをした。それが他のシステム会社とは違うモデルとの差別化ではないか。

 入出荷業務の改善をサポートするクラウドサービスとして、当社はいろいろなユーザーの要望を聞き、便利機能を抽出して開発するスタイルとして、約2週間に1回の割合で機能を追加している。

 MOVOバースは他システムと対応機能数が大きく異なる。予約のやり方は3つあり、サプライヤーから到着時間を11時から12時の間に行きたいという情報を、前日夕方5時までいただければ、物流センター側から 「10時から12時に来てください」「10時から11時に 来てくださいみたい」と調整をする。

 また、バースが空いてる時間をシステムで表示を行い、サプライヤーから希望時刻帯を出してから、予約をするパターンもある。前に紹介した時間調整に合致しなかった場合、適合することが多い。

 もうひとつは拠点側で、決まった運送会社の到着時間がルーティンで決められ、毎日変わらないパターンだ。協力会社やサプライヤーに情報を投げ、車両とドライバー情報を投げてもらうやり方だ。

 通常は物流センターにトラックが到着したら、守衛所に設置するタブレットで到着したことを知らせることが多いが、「オンライン受付」機能で目的地となる物流センターの半径5km以内であれば、ドライバーの持つスマホやガラケーから受付可能とする。

 月額料金は1拠点で5万から10万円。現在は予約を行うサプライヤーの拠点などが1万超、受け入れ側の拠点では500を超えた。トラックの集中や待機時間を解消するだけでなく、作業状況や車両の到着状況を可視化することで、物流センター運営にかかるコストも削減でき、物流生産性の向上を支援する。

――MOVOバースで「2024年問題」の解消となるのか

 MOVOバースは、ドライバー不足問題の一因となる待機問題を減少する、なくすための仕組みとして非常に有効だと考える。事例として、アスクルさんではトラックの待機時間が平均42分から12分まで短縮、事前予約率の向上でバースの稼働率が高まった。

 新たなリリースとして、MOVOバースに予約情報連携APIを追加した。予約情報をシステム間でリアルタイムに連携し、車両の入退場記録や現場での作業時間記録、バースへの呼出を外部システムから実施できるようにした。車番認識カメラ・ゲートシステム・倉庫管理システム等と連動させることで、さらに高度な倉庫運営も支援していきたい。
 

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